2017年12月31日日曜日

夢の中のエレベーター

 エレベーターに一人で乗っているとき。ほんとに確かに目的の場所に着けるのか。そんな不安が、ふと頭をよぎる。そんなときがある。
 ほかの人が乗っていても、着いた階で、たった一人で降りたとき、ここは目指す場所であるのかと、妙に不安になってくる。

 夢の中のエレベーターは、それはそれは恐ろしい。
 夢の中のエレベーターは、真っすぐ上に昇るとは限らない。真横に、斜めに、ゆっくりと回転しながら昇っていく。

 夢の中のエレベーターは、どこに連れていくのか、わからない。
 高層ビルの途中で止まる。そこはオフィス。どうも昔に勤めていた会社のようだ。
「おかえりなさい」と声がする。中途退社した私なのに、何事もなかったかのようだ。
 しばらく過ごし、ふたたびエレベータに乗る。

 少し上の階で停止する。そこもオフィス。どうやらこここは、独立した私が一番お世話になった得意先のようだ。
「あ、いらっしゃい」そして「やあ、しばらくぶりですね」と、なつかしい顔の人たちが声をかけてくる。
「ご無沙汰です。みなさん、お元気そうで何よりです」
 しばらく談笑し、忙しそうな雰囲気に遠慮して「ではまた」と退室する。
 そして、またエレベータに乗る。

 夢の中のエレベータは最上階に止まり、扉が開く。出ると、外は見たことがない世界。ここは、ひょっとすると黄泉の世界かも知れない。そんな直感がした。
 あわてて引き返した。扉はすぐに開いた。一階を押した。夢の中のエレベータは猛スピード降りた。だが、一階を通り超し、地下へ地下へと進んでいく。

 やがてエレベーターが停止しドアが開いた。ビルの地下室と思えた。誘われるように外に出る。頭上に薄明かり。見える先は暗い闇が続く。物音ひとつしない。振り返ると、いまさっき乗ってきた夢の中のエレベーターの扉は消え、そこには薄明かりが斜めに差した白い壁があるだけだった。

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夢の中でのトイレ探し

 眠りの中の世界は恐怖の世界。私は、そこに入り込み、さんざん辛いめに合い、最後に必ず一人ぼっちにされ、うっすらと目が覚める。
 子どものころは、迷子になって、草木の生い茂った森の中や、でこぼこ岩の山道をさまよい、夜になると獣の鳴き声が聞こえ、足元に蛇やら虫やらが這い寄ってくる。あっちへこっちへ逃げ回り、最後に川の中に落っこちる。目が覚めると、布団が水濡れになっている。そんな感じで、しょっちゅう寝小便をしていた。
 少し大きくなってからは、学校の便所が嫌だった。大便をするのは泣きたいほどだった。汚かった。便器に先に入ったやつのが残っている。黄色いの黒いの、それぞれに臭くてたまらない。出ると必ず臭いが衣服に付着している、友だちのそばに恥ずかしくて行けない。そうして一人ぼっちになる。
 子どもの姿で出てくる夢を見ると、最後のほうには必ずトイレを探し回っている。なかなか見つからない。やっと見つけたら、やっぱり汚い。別を探そうと動き回るうちに迷子になる。夢の初めに一緒にいた人間たちの姿は消えている。見たこともない場所に、たった一人でいる。何年たっても、何度も何度も、よく似た夢が繰り返す。
 こういうのをトラウマというのだろうか。